みなさん、こんにちは。
ボイストレーナー・話し方講師の新田知代です。
ボイトレを経験してきたなら
一度は耳にしたことがある「ミックスボイス」。
声楽中心の方だとあまり縁がないかも知れませんが
ポップス&ロックを歌う方は
絶対についてくる声の種類ですよね。
そしてミックスボイスの出し方について
レッスンで言われる代表的な言葉はこれ。
「ミックスボイスを出すには、裏声と地声を混ぜましょう」
声を混ぜるって、
どうやって・・・?
先生によって言うことが違う。
動画によって定義が違うし、
なんなら感覚もよく分からない。
練習をしているだけれど
これは地声?裏声??息漏れ????
キンキンしているけどこれがミックス??
と練習迷子になる人も多い印象です。
この記事では、ミックスボイスという言葉の正体を、
感覚論ではなく声帯の仕組みから解きほぐしていきます。
正直ミックスボイスの全容をお伝えしきるのは
この記事だけでは難しいのですが、
少なくとも読みやすくて存在自体の理解が進むはずです。
読み終わる頃には、「混ざらない」のではない、
その正体も見えてくるはずなので
諦めずに最後までお読みくださいね。
ちなみにこのテーマは、
音声でもお話ししています。
文章より“声”で聞いた方がイメージしやすい方は
こちらからどうぞ。
▶︎ 音声で聞くPodcast(リンクはのちほど)
「混ぜる」という説明は、なぜ通じないのか
ミックスボイスの説明でよくある
「裏声と地声を混ぜる」という説明は、
絵の具のイメージに近いものですよね。
青と赤を混ぜれば紫になる。
だから裏声と地声を混ぜれば、その中間の声になる。
直感的でわかりやすい説明だなと私も思いますし、
過去にはそうお伝えしていた時期もありました。
ところがですね・・・
このたとえには前提条件のズレがあります。
絵の具の場合は
青と黄色という「別々の材料」が最初から存在しています。
一方、声の場合はどうでしょうか。
あなたの喉の中に
「裏声を出す装置」と「地声を出す装置」が別々に備わっていて、
その出力を配合しているわけではないのです。
もちろん、意識的に切り替えることはできるでしょう。
話し声は地声
合唱を歌う時の声は裏声
のように切り替えることはできます。
でも。そもそも。
声を作れる器官って「声帯」しかないんです。
1人一か所、喉にしかないんです。
喉にパチっというスイッチがあって切り替わるのであれば
ミックスボイスはそもそも存在しない。
つまり地声と裏声の関係は
同じ「声帯」の使い方を変えているだけ
※正しくは声帯周りの筋肉の使い方も含みます。
つまり混ぜようにも混ぜる材料が二つに分かれていない。
「混ざる感覚がわからない」のは
練習不足や特別な人にだけ許された声質なのではなく
そもそもその認識が違っているから感覚が掴みにくい
という見方ができるのです。
声帯で実際に起きていること
では、裏声と地声の違いはどこから生まれるのでしょうか。
鍵を握るのは、声帯の「厚み」と「張り」です。
地声寄りの声では、声帯はやや分厚く、
たっぷりと触れ合いながら振動します。
裏声寄りの声では、声帯は引き伸ばされて薄くなり、
縁のあたりが軽く触れるか、
触れきらないまま振動すると考えられています。
この厚みと張りをコントロールしているのが、
主に二つの筋肉です。
声帯そのものを分厚く緩める方向に働く
甲状披裂筋(声帯の本体にある筋肉)
声帯を引き伸ばして薄くする方向に働く
輪状甲状筋(喉仏の前下あたりにある筋肉)
この二つが、シーソーのようにバランスを取り合っています。
ここで大切なのは、この二つの使われ方が、
もともと滑らかにつながっているわけではない、ということ。
地声系と裏声系では振動の仕組みそのものが切り替わるため、
その境目は本来「段差」になりやすいと考えられています。
段差とは声のひっくり返り(フリップ)です。
声がひっくり返るのは、
仕組みの上ではむしろ自然な現象です。
安心してね~ひっくり返るのは正常!
そしてミックスボイスとは
「地声でも裏声でもない第三の特別な状態」が
喉のどこかに隠れているのではなく、
この切り替えを訓練によって滑らかに
目立たなくできるようになった状態のこと。
照明の調光ダイヤルのように
分厚い状態から薄い状態までの中間域を
自分の意思で行き来できる状態のことだと捉えるほうが
実際のイメージに近くなるように私は感じます。
声のグラデーションを捉えられるようになっているかどうか。
なお、喉頭の観察研究の世界でも、
この中間域の振動をどう区分けして呼ぶかについては
研究者の間で見解が分かれているらしく
「ミックスボイス」という用語自体
学術的に一つの定義が確定しているわけではないそうです。
言葉の定義が揺れているのですから、
先生によって説明が違うのも、ある意味で当然ですよね。
では「混ぜろ」という指導は間違いなのか
ここまで読むと「混ぜるという指導は嘘だったのか」と
思われるかもしれません。
いやいや、そんなことありません。
地声から裏声にかけてのグラデーション自体が
そもそも「声が混ざっている」感じに聴こる声です。
(spotifyの方で実演付きでやるのでそちらをお聞きください)
なので感覚的に言えば混ざって聞こえるもの。
じゃぁ出してる本人はどうですか?というと
混ざっているというか、
こういう声を出したいと思って出しているだけです。
一気に感覚的であり抽象的になってしまいますが、
補助輪を外して自転車に乗る時のバランス感覚って
補助輪なしの自転車を運転できる人に対してじゃないと
なかなか伝わりにくいのと一緒。
声もバランス感覚を身につけた人には伝わるのですが
バランス感覚を掴むまで練習するしかない。
その際に一番使い勝手がよい言葉が
「地声と裏声を混ぜる」という表現なだけです。
身体の使い方・声の響かせ方は時として抽象的で
指導で使われる言葉としては適切であっても
実際の体の感覚とは別物であることは往々にしてあります。
誤解が起きるのはこの誘導の言葉を
「事実の説明」として受け取ってしまったときです。
「混ざる感覚があるはずだ」と信じて、
存在しない感覚を探し続けてしまう。
これが多くの中級者が迷子になるパターンだと感じています。
「混ざった感じ」を探すと、迷子になる
もう一つ、見落とされがちな落とし穴があります。
それは体感と実際の音のズレです。
自分の声は骨を伝って聞こえている分、
外で鳴っている音とは別物です。
よく録音した自分の声を聞いたら全然別物だった、
という経験を聞きますがそれです。
「いま混ざった気がする」という体感が、
録音で聴くとただの弱い裏声だった、
ということは珍しくありません。
逆に、本人は「地声のまま張り上げてしまった」と感じた声が、
録音ではきれいに中間域に入っていることもあります。
体感は完全に感覚を覚えていない時は裏切ってくるので笑
正しい判定は録音に委ねるか
しっかりとしたボイストレーナーについて
ジャッジメントしてもらうのが速いし正確で安全です。
このとき役に立つのが、
海外の発声訓練で広まっている
「声をひとかたまりで捉えず、部品ごとに別々に動かす」
という考え方です。
私も以前受けたEstill Voice TrainingのLv.1&2の講習会では
声帯の厚み、喉の高さ、軟口蓋の上げ下げ、
こうした要素を一つずつ独立して
動かす考え方を学ぶことができました。
こうした知識と経験を積むことで
ミックスボイスを出すために訓練している人の
どこの要素が足りないのか分かるようになるのです。
人によって
声帯閉鎖のコントロールの問題
声帯伸縮のコントロールの問題
披裂軟骨のコントロールの問題
喉頭の位置コントロールの問題
甲状披裂筋・輪状甲状筋の使い方の問題
甲状軟骨の傾きの問題
輪状軟骨の傾きの問題
etc…
など、原因が異なります。
その中でYouTubeやTikTokに上がっている動画を見ながら
自己流の練習をしてもミックスボイスを
獲得できないのは自分の声の現状、
どこに課題があって問題があるのか掴めていないから。
そのためにボイストレーナーというプロがいて
1人1人の課題を見つけて解決する手伝いをしているんです。
迷子になって喉を壊す前に頼って欲しい・・・
明日からの練習で変わること
ということで。
ミックスボイスを「獲得すべき特別な声」と
捉えるのをやめると練習の景色が変わります。
目指すのは、
声のグラデーションを見つけるために声の解像度をあげること。
たとえば1音を決めて弱い裏声から始めて、
地声の強い声に変えてまた弱い裏声に戻す。
逆に地声から始めて少しずつ弱い裏声にしていく。
(messa di voce という練習方法)
この往復の途中で声がひっくり返ったり、
段差ができたりする場所こそが、
あなたの「まだ滑らかでない区間」です。
この段差をなくすためにどんな練習が必要なのか
どんなエクササイズが効果的なのか見つけていく
それがミックスボイス練習の正体になっていくのです。
独学に限界を感じたら
「そもそも段差があって直せなくて困ってる。」
「出来ているような気がするけどミックスボイスか分からない」
「自分では判断がつかない」
「録音を聴いても、何を直せばいいのかわからない」
そんなふうに感じている方は、
一度レッスンでプロの耳を借りてみませんか。
NEWNESS MUSICでは、
クラシック声楽とポップス、両方の発声法を土台に
感覚論に頼らない科学的なアプローチで
あなたの声の現在地を一緒に確認します。
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