みなさん、こんにちは。
ボイストレーナー・話し方講師の新田知代です。
カラオケやバンドで音楽スタジオに入った際
「声量はあるはずなのに、マイクを通すとなぜか声が埋もれる」
「スピーカーから出てくる自分の声がこもって聴こえる」
と感じたことはありませんか?
「ボーカルの音量が低いのかも」
と思ってミキサーのメインボリュームやゲインをあげて
ハウリングを起こしたこともきっとあったかと思います。
ボーカルの声をオケや他楽器に負けないようにする
ミキシングの技術もありますが、
やはり一番大切なのはボーカル自身の実力です。
そして意外にその実力とは「声量」だけの問題ではありません。
今回はすぐ取り入れることができる
・マイクの持ち方
・マイクに声が乗りやすくなる発声
についてお伝えしていきます。
ちなみにこのテーマは、
音声でもお話ししています。
文章より“声”で聞いた方がイメージしやすい方は
こちらからどうぞ。
▶︎ 音声で聞くPodcast(リンクはのちほど)
マイクの持ち方・口元への当て方
まず大切な道具の使い方から。
家で練習する場合はペットボトルで代用してOKです。
正しいダイナミックマイクの持ち方
- ボディ(グリップ)部分を握る。
ヘッドキャップ(網の部分)は握り込まない - マイクと口の距離は「こぶし1つ分〜指1本分」が基本
- マイクの集音部分は口元に対して45〜90度の角度で持つ

※図は大体の感覚として参考にしてください。
ヘッドを握り込むのがNGなのには理由があります。
ダイナミックマイクの多くは「単一指向性」といって、
正面の音を拾い、周囲の音を拾いにくくする設計になっています。
外の楽器の音は拾わず、マイクに近い音だけを拾ってくれます。
この指向性はヘッド内部の空気の通り道によって
作られているので、ヘッドを手で覆うとその設計が崩れ、
音がこもったりハウリング(キーンという音)が
起きやすくなります。
また、マイクには口を近づけるほど
低音が強調される性質(近接効果)があります。
マイクを唇にベタ付けして歌うと声が太く聴こえる反面、
モコモコして輪郭がぼやけやすくなるんです。
距離を「指い本分~こぶし1つ分」確保するのは、
この低音のかぶりを避けて
声の輪郭をクリアに出すためなんですね。
逆にマイクテクニックとして「近い声の距離感」を
出したい時にはグッと近づけて歌唱することもあります。
マイクとの距離が近くてスピーカーの音が割れる場合は、
ゲイン(マイクの集音感度)を下げましょう。
クリアな音質で自分の声が返ってくると、
それだけで歌いやすさが変わりますよ。
ここでマイクを話すと音域によって声量の入る量が変わる、
声が通らなくなる、という人は
そもそも発声に原因がある可能性があります。
どの音域に問題があるのかボイトレで見てもらって
声を通りやすくした方がストレスなく歌えます。
マイクに声が乗りづらい最大の原因は「鼻声」
道具の使い方を押さえたら、次は声そのものの話です。
発声に原因があるとお伝えして、
今まで見てきた生徒さんの中で多かった事例が
「鼻声」の問題です。
マイクに声が乗りづらい原因の代表格が「鼻声」。
風邪を引いたときの「鼻声」を
思い浮かべる方が多いと思いますが
実は歌唱時に問題になる鼻声は
風邪の鼻声とは仕組みが正反対なんです。
ここで少しだけ体の仕組みの話をさせてください。
口の奥の天井、舌で触ると柔らかい部分を
「軟口蓋(なんこうがい)」といいます。
この軟口蓋は、声の通り道を
「口方面」と「鼻方面」に振り分ける踏切のような役割
をしています。
- 風邪の鼻声:
鼻が詰まって、鼻方面のルートが
「通行止め」になっている状態。
鼻に響きが入らないので
「マ行・ナ行」が言いにくくなります。 - カラオケで損する鼻声:
軟口蓋という踏切が開きっぱなしで、
声がどんどん鼻方面に「流れ込みすぎている」状態。
つまり、通行止めか、流れ込みすぎか。
原因は真逆なのに、どちらも「こもって通らない声」に
聴こえるのが面白いところです。
今回改善したいのは後者、
声が鼻に流れ込みすぎるタイプの鼻声です。
あれ?ちょっと待って。
「鼻腔共鳴すると声がよく出る」って聞いたことがあるけど
この鼻声はNGって鼻腔共鳴もNGってこと??
と思った方。
よく勉強されていますね。
鼻腔が副共鳴腔として倍音を加えるのは事実です。
倍音が多く鳴ると豊かな響きのある声になります。
しかしそれは口腔の共鳴がしっかり確保された上での話。
軟口蓋が落ちて声のエネルギーが
鼻腔に「流れすぎている」状態では、
共鳴どころか声の通りが落ちてしまうのです。
ここでお伝えしたいことはバランスを取って使うということ。
なぜ鼻に声が流れすぎるとマイクに乗らないのかというと、
鼻の中(鼻腔)は、柔らかい粘膜に覆われた狭くて
入り組んだ迷路のような空間です。
カーテンやソファの多い部屋では音がこもるのと同じで、
声の響きはこの柔らかい迷路の中で弱まってしまいます。
声の「抜け」や「通り」を作る成分が外まで届かなくなるので、
マイクが拾える響きが減ってしまうんですね。
さらに軟口蓋と舌は筋肉でつながっているため、
軟口蓋が下がった状態では舌の付け根(舌根)も
持ち上がりやすく、喉が締まる感覚にもつながります。
(もちろん、個人差はあります)
自分が鼻声かどうかチェックしてみよう
鼻声には段階があります。
実際のレッスンでも鼻声チェックを取り入れているのですが
このチェックをするだけで声が通らない時に
鼻声になってしまっていると気づきやすくなります。
3つの状態を体感で確かめてみましょう。
①完全に鼻声
口を開けた状態で「んーー」と声を出します。
「う」にならないようにします「ng」(Singの「ン」を発音)
「んー」をキープしたまま口を「あいうえお」の形に動かしても、声が「んー」のまま変わらない状態ですよね。
(もしあいうえおの形に変えた時に声が変わる時は
舌の位置の変化等によりngが崩れています)
このときに感じて欲しいのは
舌の付け根と口の奥(軟口蓋)がピタッとくっついた感覚
声の通り道が完全に鼻側だけになっている状態。
これが完全に鼻声になって声が大きく出ない状態です。
②半分鼻声(開鼻声)
女優の篠原涼子さんやYOUさん、
浜崎あゆみさんの話し声を真似して
「あいうえお」と言ってみましょう。
鼻にかかって話すあの感じです。
鼻をつみながら声を出した時に
声に変化があれば半分鼻声です。
舌の付け根と軟口蓋は近いけれど、少し離れた感覚。
声が口と鼻の両方に分かれて流れている状態です。
歌でよくある例としては
・特定の音域だけ鼻声になって声の抜けが悪くなる
ことがあります。
歌声においては話し声だけでなく
歌唱時に声が出にくい場所でこのチェックを
してみると原因特定が早まります。
③鼻声ではない声
郷ひろみさんの『2億4千万の瞳』、
サビの「ジャパーン!」の声をイメージしてください。
声がパーン!と前に飛ぶ感覚で
「あ・い・う・え・お」と発声してみましょう。
鼻をつまんでも声に変化がないはずです。
舌の付け根と軟口蓋がしっかり離れていて、
声の通り道が口側に確保されている状態です。
マイクに一番乗りやすいのは③の声。
声量を「出す」というより
声が勝手に響いて通るので
無理なく声が出る感覚になるはずです。
この声でマイクを使うと声の入り方が変わるので
ぜひ取り入れてみてくださいね。
どの音域でもできるようになると一気に変わる
さて、実際に声の出し方はなんとなくわかった。
でも多くの人が問題視しているのは
低音域、中音域ではできても、
高音になると②や①になってしまうこと。
高い音を出そうとして喉頭が上がりすぎてしまったり、
喉まわりに力みが出たりして、息の圧が喉に集中してきます。
すると体は、その苦しさから逃げるために、
無意識に鼻方面の踏切を開けて圧を「非常口」から
逃がそうとするんです。
本人は頑張って歌っているつもりでも、
声の一部が鼻に流れてしまうので、
サビで急にマイクに乗らなくなる。
そんな心当たりのある方、多いのではないでしょうか。
対策はシンプルで、③の「パーン!」と飛ぶ感覚を保ったまま、
半音ずつ音程を上げ下げしていくこと。
途中で鼻をつまんで声が変わったら、
そこがあなたの「鼻声に切り替わる境目」です。
境目の音で立ち止まり、軟口蓋と舌根が離れた感覚。
口の奥に縦の空間がある感覚を取り戻してから先に進む。
この地道な往復が、全音域で通る声を作ります。
もし音程を付けて練習したのであれば
男性:C3~E5あたり
女性:F3~G5あたり
まで広く練習するとより効果的になります。
(音域は各個人のレンジによって増減します)
カラオケ前の発声練習として、
まず「ジャパーン!」で鼻声にならない声を掴んでから
マイクを握ってみてくださいね。
話し声でも歌声でも、
マイクに声が綺麗に乗るようになっていきます。
「練習しているのに、マイクを通すと声が変わってしまう」
「高音になると急に声が通らなくなる」
——そんな伸び悩みを感じている方は、
発声の土台から見直すタイミングかもしれません。
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