『なんとなく取れている』が一番危ない。脳科学から見た相対音感が崩れる瞬間と原因

歌や音楽

みなさん、こんにちは。
ボイストレーナー・話し方講師の
新田知代です。


「相対音感を鍛えましょう」


絶対音感よりもレッスン現場で
よく聞く言葉です。

音楽をやっている方なら
実は相対音感が音楽をやる上で
とても重要であることは
ご存知かと思います。


アンサンブルで音程を合わせるとき、
初見の楽譜(または初めての曲)を歌うとき、
転調したフレーズを瞬時に対応するときなど
あらゆる場面でこの能力が使われています。



しかし、
「重要だとわかっている」ことと
「何であるかを正確に理解している」ことは
別の話です。

そもそも相対音感ってどういう定義?
何もの?

そんな疑問を持つ方へ
この記事では、
相対音感の正体を脳科学的な根拠をもとに
解説していきます。

ちなみにこのテーマは、
音声でもお話ししています。
文章より“声”で聞いた方がイメージしやすい方は
こちらからどうぞ。

▶︎ 音声で聞くPodcast(リンクはのちほど)

「音感がいい」と「相対音感がある」は別の話

「あの人、音感がいいよね」

上手な人の歌を聞くと
感想でこんな言葉が出てきます。

きっと音感があるから・・・と思われがちですが
これは「音程が安定している」という結果の話。

絶対音感や相対音感はこれらとは違うんです。



相対音感とはある音を基準にしたとき、
別の音との距離(音程=インターバル)を
認識する能力のことです。


「結果として音程が取れている」のではなく、
「ある音を基準に、次の音が
『どれくらい高いか・低いか』を測るプロセス」
そのものを指します。



音程感がいい人が全員、
この感覚を意識しているわけではありません。

なんとなく取れて、なんとなく出来ている。

そんなケースも多く、
細かい音程の部分で音程迷子になったり
そもそも音を捉えられないこともあります。

これは相対音感が育ち切っていないから
起こりうるケースともいえます。

絶対音感との違いは「優劣」ではなく「処理回路の違い」

相対音感より
絶対音感の方がかっこいい!

そう憧れる方は多いです。


「絶対音感があれば音程に困らないのに」と
思っている方もいるかもしれません。
でも実際、絶対音感と相対音感は
優劣の関係はなく
脳の使い方、処理回路がそもそも異なるんです。


絶対音感は、
音を聴いた瞬間に「これはA(ラ)」と
自動的にカテゴリ認識する処理です。
基準音も比較も必要ありません。

一方、相対音感は
基準となる音を記憶に保持しながら、
次の音が「どれくらい高いか・低いか」を
聞き取る処理です。


難しい話だと神経科学的には
絶対音感は自動処理、
相対音感はワーキングメモリ(作業記憶)を
使った意識的な処理
に分類されるそうです。


つまり絶対音感を持っていても、
この「基準音と比べて読み取る力」が
未発達であれば、
メロディラインで音を外すことはあります。



逆に言えば、
相対音感が身についていれば
音程が安定するので音を外すことはなくなる。

そしてこの能力は後天的に
身につけられるものなんです。

脳は音を「聴く」のではなく「比較」している

そんな相対音感ですがこの話をするとき、
「耳がいい人は音が正確に聴こえている」
というイメージを持つ方が多いです。

でも実際は違っていて、
音程の知覚は、音を耳で受け取った後に
脳が能動的に作り出しているものです。

ピッチは耳に届く前に”生成”され、記憶される

少し驚く話かもしれませんが、
ピッチ(音の高さの感覚)は
空気中に存在するものではありません。

耳に届くのは空気の振動。

その振動をもとに、
脳が「この音はこの高さだ」と判断して
初めて音程として感じられます。



そして相対音感が「相対」である以上、
必ず基準となる音が必要です。

その基準音を頭の中にキープしながら、
次の音と比べる。
音程を正しく認識する時には
こんな処理をしているんです。
実は私たちの脳ってすごい。



ただ、
「頭の中に音を置いておく力」には
実は限界があります。


転調が続いたり、
テンポが速くなったりすると
音程が不安定になるのは
この限界を超えてしまうから。

覚えていられる脳のメモリが
足りなくなると記憶が零れ落ちていきます。


頭の中でどれだけ音を保持できるか、
音感はこの観点の話でもあるんです。

そして最後に「声に変換」される

たとえ頭の中で音程を正確に捉えていても、
声、歌に乗せるときに
「ずれて出てくる」ことがあります。

正しい音程は認識しているのに
口から出てくる音がズレている状態
音感を持っている人が
「私、音痴で・・・」とおっしゃる方が
気が付いている状態でもあります。



耳と声(発声)がまだ繋がっていないんです。


よく、
「音痴って治りますか?」と相談をいただいて
治る方と治らない方がいます、と
回答するのはここが理由です。



音程をそもそも正しく認識している
→音痴が治る可能性がある

音程をそもそも正しく認識できない
→音痴が治らない可能性がある


前者であれば音程ミスのすべてが
耳の問題ではありません。
聴こえた音を声に変換するルートが
育っていないことが原因。

だからこのケースは
ボイストレーニングでアウトプットする
技術を身につけていくことで
改善される事が多いのです。

「音程が外れた」には必ず原因がある

仕組みがわかると、
音程ミスは「なんとなく外れた」
ではなくなってきます。


たとえば
転調した途端に音程が分からなくなるのは
基準音を見失うから

転調(キー変更)が起きると、
基準となる主音が変わります。

新しい主音に切り替えながら、
同時に次の音を処理しなければならない。

このとき「頭の中に音を置いておく力」が
追いつかなくなり、基準音を見失います。

転調で音程が分からなくなる人は
耳が悪いのではなく
頭の中の作業が溢れているだけだったりします。

下行フレーズだけ甘くなる場合

また、
「上にあがる音程は取りやすいのに
 下にさがる音程は外しやすい」
というパターンもありますよね。

ドレミファソファミレドの音階で
ドレミファソは正確に取れる
ソファミレドになると下がりすぎてしまうとか。

これがなぜ起きるのかというと
最高音に到達した後、
心理的・筋肉的な緊張が緩んでしまうことが
原因のひとつとして考えられています。



つまり「山を越えた、よかった」と
体と気持ちが無意識にホッとしてしまって
気が抜けてしまっている状態


気が抜けるので下りの音の距離や
筋肉のテンションまで
意識が向かなくなりやすいですよね。

低音に向かう時に声量バランスを崩す
音程が不明瞭になるのは
ここからきている事が多いです。

だからプロの歌手は最高音の後も
音程を正確に、筋肉のテンションを保つ
訓練をしています。

耳と身体がその感覚を覚えるから
歌で音程が崩れにくくなるのです。

細かい練習ですがここが一番効いてきます。

シンプルなアンサンブルほど音程が怪しくなる逆説

アンサンブルとは音楽用語として
2人以上で調和した演奏をする事を指します。

大人数の演奏(伴奏)であれば
音程は取りやすいのに
ピアノと歌、ギターと歌のように
シンプルな伴奏になると
細かい音程がブレたり甘くなる。

そんな経験、
したことがある人も多いと思います。

伴奏や他の声部という
「外からの音の手がかり」が減ると、
自分の声だけを頼りに
音程を判断しなければならなくなります。

ここが音感の使いどころで
相対音感があれば
今歌っている音から次の音程の高さが
イメージできるので外さなくなります。



他者に頼らず、
自力で正しい音感で歌う。

これはプロの歌手に求められる
最低限の音感能力です。


他の楽器に頼らず
自分の音感レベルをあげるためには
このような静かな環境での練習が
大切な理由はここにあるのです。

どう鍛えれば相対音感は身につくのか

ここまでで思い当たる部分があった方は
これからの練習方法が明確になってきます。

音感訓練は様々な方法がありますが
ここでは一番分かりやすく実践しやすい
ものをあげていきます。

音の高さ曲由来で覚えず、音そのものの高さで知覚する

「C4はとある曲の歌いだしの音程」

こういう覚え方、
やったことがある方も多いのではないでしょうか?

入口としては有効ですし、
私も歌いだしの音でしゃくって
音を探る癖のある方には
「歌い出しはC4だよ」と
お伝えすることがあります。



この方法で音感を身に着けたい方は
一つ気を付けて欲しいことがあります。

×C4は、この曲の歌い出し
〇この曲の原曲の歌い出しは、C4


という認識を持つ事です。


なぜなら、
「この曲の歌い出しはC4」で覚えてしまうと
万が一、キーが変更されていた場合(転調)
C4はD4にもB3にもなるから
です。




言葉遊びのように感じるかもしれませんが
音感を身につける上で

「今は何の音で、次は何の音。
 音の距離はこのくらい」

と認識している必要があるので
音そのものの高さで知覚しましょう。



ピアノアプリで鍵盤にC4やらG5等
書いてあるものがありますので
鳴らしながら「あー」と
音当てゲームをしていくのがおすすめです。

ポイントは「しゃくらないで音を取る」。

「ぁあ↑」の助走を入れずに
正確に音程を取るようにしましょう。

1度、2度、3度・・・と音の距離を掴む練習

例えばC4を基音とした場合

C4→D4→C4
C4→E4→C4
C4→F4→C4
C4→G4→C4
C4→A4→C4
C4→B4→C4
C4→C5→C4

とメジャースケール(長調の音階)を使って
ピアノの白鍵同士の距離を覚える練習
かなり効果的です。


特に先に述べた下行系
A4→C4やB4→C4などの跳躍が含まれると
着地の音を外しやすい傾向が分かります。


もし理論がある程度わかるのであれば
マイナースケール(短調)で
・自然短音階
・旋律的短音階
・和声的短音階

の練習も相対音感を育てるのに
有効的です。


出来る人はさらに転調してもOK。

ここまで来ると音大・音楽科で行う
ソルフェージュと同じ訓練になってきますが
プロの歌手はこの位
音感の精度が高いということです。


この音と音の繋がり、距離を正確に覚えて
メロディに対して同じように
感覚が掴めるようになると
歌唱中の音程がズレなくなってくる
のです。

これが脳が音と音を比較して
認知する相対音感の正体です。


せっかくやるなら
プロがやる練習で音感を身につけましょう。
その方が早く身につきます。

相対音感は根気さえあれば身につくもの

音程が外れた時に
「音感がないから」と思いがちですが
相対音感を身に着けることで
正確に取れるようになることは
お伝えできたかなと思います。


そして相対音感は、
持って生まれたものではなく
脳が認知する仕組みの問題です。



しかし、人によっては根気のいる
練習かも知れません。

走るのが得意
本を読むのが得意
お喋りが得意

というように人によって
得意不得意があるように
この音を捉えること自体が
得意な人、不得意な人がいます。


得意な人は更に相対音感を鍛えて
不得意な人はできるところから
鍛えて身につけていきましょう。


相対音感は身につけられます。

「自分の音感、なんかおかしいな」
「ここだけどうしても越えられない」

そんな壁にぶつかっている方、
多いと思います。

でもその壁には必ず原因があります。

この記事でお伝えしたように
相対音感は才能ではなく、仕組みの問題です。
ということは、
正しくアプローチすれば変えられるということ。

ただ、自分一人で原因を特定して
有効的なアプローチをするのは
なかなか難しいのも事実です。

プロのトレーナーは
その原因特定と修正指導がとにかく早い。

そもそも音程がズレる原因が
・音感なのか
・発声による影響なのか

そのジャッジメントも正確で早いです。


何ヶ月も「なんでだろう」と悩んでいたことが
レッスン一回で腑に落ちる、
というのは 全然珍しくない話です。

NEWNESS MUSICでは、
クラシックとポップス双方の発声理論をベースに
解剖学・科学的視点から
あなたの声の現在地を正直にお伝えします。

現役VTuberや音楽事務所所属タレント、
プロの声のメンテナンスも担当している
私と一緒にその天井、破りにいきましょう。

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