「し」って言いにくい。
録音した自分の声を聞くと
なんとなく発音が気になる。
滑舌って誰に相談したらいいか分からないし
みんなそんなに気にしているものかな?
でもなんかモヤモヤするし・・・
どう直せばいいの?
そんなお悩みはありませんか?
今回レッスンに来てくださった生徒さんは
自分の声を録音して聞いたことがきっかけで
滑舌を気にするようになったそう。
特に気になっていたのは「し」や「ち」の発音。
周りの人に聞いてみても
自分から聞いて初めて「確かに」と言われて。
周りからそう聞こえるなら、
直したい、と思うようになったそうです。
そこで今回のレッスンでは
言いにくい音が含まれる文章を読んでいただき
発音の状態を確認していきました。
すると、ご本人からすると
ちょっと意外なことが分かりました。
「し」だけでなく、
実は「さ・す・せ・そ」の基本となる
「S」の音に課題がありました。
今回はそんな滑舌のお悩みを、
舌や唇、息の使い方から見直していった
レッスン事例をご紹介します。

レッスン前はどんな状態だった?

色々お話を伺っていくと
もともと自分の声にあまり自信がなかったそう。
声が低めに感じることや
声が通りにくいこと。
滑舌が気になることなど
いくつかのお悩みをお持ちでした。
中でも今回一番改善したかったのが
「し」や「ち」の発音。
子どもの頃から発音を注意されていたわけではなく、
自分の声を録音して聞いたことで
違和感に気づいたそうです。
そこでまずは現在の滑舌を確認するために
サ行を含む文章をいくつか読んでいただき、
まずは普段どのように発音しているのか
現在の状態を把握するところから始めました。
「し」だけじゃない!発音を確認して分かったこと

文章を読んでもらうと
とある共通点が聞こえてきます。
それは、
「し」だけでなく
「さ・す・せ・そ」の
「S」の摩擦音もうまく鳴っていなかった
ことです。
摩擦音とは、口の中に狭い息の通り道を作り、
空気を通すことで生まれる音のこと。
例えば「静かに、シー」と息を出した時に聞こえる、
あの「ssssss」という音です。
今回の方はサ行を発音する際に
この摩擦音が別の音に
近づいてしまう場面がありました。
「し」が言いにくいからといって
いきなり「し」ばかり練習すれば
いいわけではありません。
なぜなら今回の場合は
もっと手前の段階に課題があったから。
Sの子音単体の音が出せないと
母音に繋げられないし、
「Sa」と「Shi」では間にhが入るので
発音が変わるからです。
そこでまず「し」の練習ではなく、
基本になる「S」の音から確認することにしました。
サ行が言いにくくなっていた原因は?

実際に「S」の音を出しながら
舌・唇・息の使い方を確認していって
一つずつ発声条件を整えていきました。
① 息が頬の横へ逃げやすかった
「前歯の横の方から漏れちゃう感じがする」
Sの音は前歯に息を当てます。
ですが実際に発音を確認すると
息が口の中央に集まらず
頬の横へ逃げやすい状態になっていました。
「し」が「ひ」になりやすい人に
起こりやすい現象です。
そこで空気が横に逃げないように
頬を指で軽く押さえながら、
息の通り道を確認していきます。
特に強く息を吐いてしまう傾向がある時は
息の量でSの音を出すのではなく、
どこへ息を当てて通すのかを微調整していきました。
② 舌が上がって息の通り道を塞いでいた
もう一つ確認できたのが、舌の位置です。
今回の「S」の練習では、舌の位置が重要です。
絶妙な場所に舌をセットして息を通すのですが
息の通り道を作ったまま舌を特定の場所に
設置するのは慣れていないと中々難しいものです。
特に息の通り道に意識が向くと
舌自体が息の道みたいに感じるので
うまくイメージが持てていないと
息の通り道を作りたい場所を
舌で塞いでしまうこともあります。
これでは、せっかく息を通そうとしても、
舌が通り道を邪魔してしまいます。
そのため
- 舌先は特定の場所に置きっぱなし
- 舌に力を入れすぎない
- 息の量と充てる場所を意識
という形で調整していくことで
段々発音は改善されていきました。
③ 唇を使って音を作ろうとしていた
さらに確認できたのが唇の動きでした。
「S」の子音を発音しようとすると
唇をすぼめたり
内側に入れたりする動きが出ていました。
「S」の音を出したいのに
唇が動いてしまうので影響を受けて
「F」に近い音になってしまう場面も。
なるべく唇を使って
「S」の音を操作しないように調整したり
息の量が増えすぎないように
繰り返し息の量を減らす微調整をしていきました。
この方の場合、「さしすせそ」を発音する為に
必要な「S」の子音を発音するためには
舌の位置、唇の動き、息の量と方向。
この組み合わせを見直す必要があったんです。
レッスンでは何をした?
まずは「S」の音だけを作る
最初に練習したのは子音のみ、
「S」の音だけです。
ただ、
舌の位置、唇の動き、息の量と方向が
うまくかみ合った時に「S」が出てきます。
だから最初からすべてを
同時に整えるのは難しいもの。
ゆっくりと感覚を確かめながら
講師の細かいフィードバックに合わせて
クライアント自身が発音の調整をしていきました。
リップロールで唇の力みを緩める
練習していくとどんどん本気度が上がる分、
身体や舌・唇、表情筋などに力が入っていきます。
心は本気でOK。
でも体はリラックスしていた方が
滑舌はよくなっていきます。
リップロールなどを挟んで
必要な場所がリラックスできるように
していきました。
「S」に母音をつけてサ行へつなげる
練習を続けていくと
摩擦音が単体で出せるようになっていきます。
そうなったら次は母音を
つけていける段階です。
「S」の音に「う」「あ」「え」などを組み合わせて
少しずつ「su(す)」「sa(さ)」「se(せ)」と
いった発音へつなげていきました。
できなかった音を何度も繰り返すのではなく、
一度できるところまで戻って、
そこから少しずつ難易度を上げる。
今回はそんな形で練習を進めました。
最後は実際の文章で確認
単音で発音ができるようになってきたところで
文章を使って発音が戻ってしまわないか
チェック、そして練習していきます。
なぜなら単音では出せても、
文章になると別の難しさが出てくるからです。
例えば「ささはら」のように「さ」が続く部分。
一つ目の「さ」はきれいに言えても、
二つ目の「さ」へ移る時に、
口の形を戻すことが間に合わない時もあります。
そんな時は一度口の形を整え直してから
もう一度「さ」を発音してもらうように
発声条件を作り直してから
いつでも再現できるように
身体に感覚を覚えさせていきました。
その後、もう一度練習してみると
成功率があがっていきました。
単音で作った音を、
実際の言葉の中でも使えるようにしていく。
ここまでが今回行ったサ行の練習です。
レッスン中、発音はどう変わった?
最初は「S」の摩擦音そのものが
うまく鳴っていなかった状態から
少しずつ音が整ってきました。
そして「さ・す・せ・そ」は単音だけでなく
文章の中でも綺麗に発音できるように。
そして、何より一番の変化として
クライアント自身がうまく発音できた時の
音の違いを捉え始めていました。
「OKって言われる時の音はなんか分かります」
という言葉もありました。
この気づきはとても大切です。
自分の発音を練習する時に
ただ「できた」「できない」で終わるのではなく
「今の音は合っている」
「さっきと何かが違う」
という違いを自分で聞き取れるようになること。
その感覚が今後一人で練習する時の
手がかりになるからです。
ただし、今回一番気になっていた
「し」の発音については、まだ練習途中です。
「S」の基本となる音は改善してきましたが、
「し」では舌の形や息の当たる位置が変わるため、
引き続き練習が必要な状態です。
「ち」「じ」についても、
今回は十分な練習までは進んでいません。
すべての滑舌が一度に改善したわけではないですが
でも、まずは基礎になる音を整えることができた。
本丸であり応用である「し」「ち」は
次のステップにあることでした。
レッスン後の自主練でも変化を実感

レッスン後、クライアントさんから
嬉しいご連絡をいただきました。
「レッスンを通して私は
空気がほっぺの方に
逃げていたことが分かりました」
「息を前歯に当てるように意識したら
大分改善したように思います。」
「リップロールも
細く前に空気を出すイメージを持つと
できるようになりました」
レッスンで確認した息の通り道や唇の使い方を
ご自身でも意識して練習されていたことが分かります。
さらに録音を聞き返すことで、
発音の変化も感じられたそうです。
ただし、最初に気になっていた
「し」「ち」「じ」については
まだ言いにくさが残っているとのこと。
ご本人も録音では良くなっているように聞こえるものの
発音のしにくさは残っていると教えてくださいました。
今回のレッスンで
すべての発音が完成したわけではありません。
それでも、
自分の発音のどこに課題があるのかを知り
録音を聞きながら変化を確認できるようになったこと。
なぜなら
ご本人がその音を再現できる方法を探すために
レッスンがあるからです。
これは、今後の練習につながる
大切な変化だったと思います。
同じ「し」が言いにくい悩みでも、原因は人によって違う
今回の生徒さんは、「し」が言いにくいというお悩みから、サ行の摩擦音を見直すことになりました。
ただし、「し」が言いにくい人全員が同じ状態とは限りません。
今回のように、舌の位置や息の通り道、唇の動きを確認することで、初めて分かることもあります。
そして、練習の難易度も大切です。
今回のレッスンでは、最初は歯を合わせるようにして「S」の音を作ってもらいました。
これは、生徒さんが発音する位置をつかみやすくするために、あえて難易度を下げた方法です。
普段の会話でも歯を強く噛み合わせ続ける、という意味ではありません。
このように、今できる方法で音を作り、そこから少しずつ実際の言葉へ近づけていくことも、練習を組み立てるうえで大切にしています。
滑舌を改善したい時には、単に苦手な言葉を何度も読むだけでなく、
「そもそも、どの音がうまく出せていないのか?」
というところから確認してみるのも一つの方法です。
自分の発音を知るところから始めてみませんか?
「し」や「ち」が言いにくい。
「さ行」がうまく言えない。
録音した自分の声を聞くと、滑舌が気になる。
そんなお悩みがあっても、
自分では何を直せばいいのか
分からないことがあります。
NEWNESS MUSICのボイストレーニングでは
実際の声や発音を確認しながら
その方の状態に合わせて練習内容を組み立てています。
ただ何度も発音するのではなく
「どこが難しいのか」
「何を変えると音が変わるのか」
「自分でも再現するにはどうすればいいのか」
を一緒に探していくレッスンです。
自分の声の特徴を知ることも
滑舌を整えていくための大切な一歩です。
自分の声を知って、自分でも扱えるようになること。
「できる時もある」を
「自分で再現できる」に変えていく。
それがボイストレーニングで
目指していることです。
書いた人
新田知代|本気で歌う人のボイストレーナー
高音が出ない、配信で声がもたない。
同じ悩みでも、理由は一人ひとり違います。
理由がわかれば、上手くなる。
だから最初に何が起きているかを分析してから
練習を組み立てていきます。
声の力で人生を切り開く人を、一人でも多く増やす。
その信念を持って、ボイストレーナーをしています。
▶ 初回 声分析レッスン:こちら

知代と優和翔のおだづもっこRadio
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