みなさん、こんにちは。
ボイストレーナー・話し方講師の新田知代です。
「高音がまったく出ないわけではない」
「発声ではできるのに、曲になると苦しくなる」
「高いところになると、
声が細くなったり力んだりしてしまう」
高音の悩みというと
「高い音が出ない」と考えがちですが
実際のレッスンでは
音そのものは出せるけど
歌になるとうまく使えない
ケースもあります。
今回の生徒さんも
高音が出ない状態ではありませんでした。
むしろ人より歌える方で
ミックスボイスもだいぶ
つかいこなし始めています。
本人も声のコントロールが
分かっているけれども
特定の音程や曲になると
高い音で声が細くなったり
「もっとボリュームを出したい」と
息で押したりする場面がありました。
今回はそんな状態から
「さらに高音を出せるようにする」
のではなく
すでに出せている高音を
どう歌の中で使うか
を探していったレッスンをご紹介します。

レッスン前はどんな状態だった?
最初に発声を確認すると
声の調子そのものは悪くありませんでした。
地声と裏声が「パキッ」と
分かれる感じも少なく
ミックスができ始めています。
一方で高くなるにつれて声が細く
カスカスした音に
なりやすい状態が残っていました。
私はその声を聞きながら
このまま曲を歌ったとき
「もっとボリュームを出したい」と
息で押す動きにつながりそうだ
と想像がついていました。
つまり今回の課題は
「高音を出せるようにすること」
ではなく
高音でも声の芯や安定感を残すこと。
ここをまず発声練習から確認していきました。

前回のレッスンと練習で起きていた変化
今回のポイントは以前より
声が悪くなっていたわけではないことです。
むしろ発声を確認すると
地声と裏声のつながりはスムーズ。
途中でサイレンの練習を入れると
低音も高音も抜けることなく
声帯がしっかり内転して
声の境目が目立たず一周できています。
発声の基礎が
しっかりできている証拠です。
ただ発声でできることと
曲の中で同じようにできることは別物。
彼女がチャレンジする楽曲には
高い音が続く箇所もあり
実際に歌うと
「高音だからもっと出さなければ」
という力が加わっていました。
つまり
発声能力は高い。
でもその能力を歌の中で使うときに
必要以上の力を足していた。
という状態でした。

高音が安定しなかった原因は?
この方については
レッスンを進める中で
いくつかのポイントが見えてきました。
高音になると声が細くなっていた
発声練習で低い音は
比較的しっかりした声が出ている一方
高くなると声質が細くなりやすい
そんな状態が見受けられていました。
そこで低音と高音の声量や
声質をそろえながら練習すると
途中からバランスが整ってきて
さらにスムーズに声が出るようになっていきます。
高音だからといって
単純に高い音の音量を増やすのではなく
低いところから高いところまで
声の状態をなるべく大きく変えずに
移動することを探していきます。
(余計な力みを発生させずに
声帯閉鎖し続ける)
「もっと出す」が息のプッシュにつながっていた
今回かなり大きかったのがこれです。
低音から高音までサイレン発声すると
たくさんの息を使わなくても
スムーズにつなぐことができました。
ところが曲になると、
歌うために息を吸う
→ 高いところでボリュームを出したくなる
→ 息を強く使いたくなる
という変化が起きました。
実際、練習中に生徒さん自身も、
「すごい力んで歌ってた」
と気づいていました。
つまりこの場面では
「高音を出す能力が足りない」というより
すでに出せる声に必要以上の力を
追加していたことが課題になっていました。
高音を出すための「アニメ声」が強くなりすぎていた
これまでの練習では声帯閉鎖を促すために
低音から高音まで明るく強い
「アニメ声」のような音色も使っていました。
これはできるようになっていました。
しかし逆にその条件が強くなりすぎて
少し自然な声へ戻すことが
難しくなっている場面がありました。
声帯閉鎖はできているがその分
声道が狭くなってしまっているので
閉鎖感は残したまま
地声に近い感覚を残した“明るい音色”
へ調整していきました。

レッスンでは何をした?
今回かなり時間をかけたのは
高音を頑張って出す練習ではなく
「どんな状態なら声が抜けずに通るのか」
を探すことでした。
息に頼っていて声が抜ける場所を確認
最初は様々な子音を使って
声が抜けたり
息の割合が増えたりする場所を探しました。
見つけたら息漏れをさせない母音に切り替えて
アニメ声に頼らず声帯閉鎖する感覚を
覚えるために繰り返し練習します。
低音を頑張りすぎない
また、これもあるあるなのですが
高音だけでなく低いところでも
音量を出そうとして
息を押している場面がありました。
そこで一度、音量をかなり小さくします。
すると低音でも暗くなりすぎず
明るい音色のまま
着地できるようになりました。
高音を安定させようとすると
高音だけに注目しがちですが
今回のように
その前の低い音をどう出しているかが
次の高音に影響することもあります。
発声でできた感覚を曲へ戻す
その後、その感覚のまま実際のサビへ戻します。
一回戻しただけではなかなか
感覚が掴めない為、
さらに曲では別の子音などつかって
鼻へ強く逃がさず、前へ声を出す感覚
を探していきます。
ここでも目指したのは
鋭いアニメ声そのものではなく
地声に近さを残した明るい音色です。
レッスン中、声はどう変わった?
練習した部分を曲に戻していくと
声がうまく通る箇所が出てきました。
発声練習のあとには
「高い声に芯が出てきた」
と伝えています。
ただしこの時点でも
「もう少し声の厚みは欲しい」と
確認しているので
これで完成したわけではありません。
まだ気を抜くと声道が狭くなり
強いアニメ声に頼ってしまうので
分かりやすい強い発声に頼らず
微妙で力加減が難しい発声に頼る
ように調節をしていきます。
段々レッスンが進んでいくと
明るい音色を維持したまま
歌える部分が増えました。
その歌唱について、レッスン中には、
「サビ、今までで一番良かったかも」
と本人から声があがりました。
一方で同じサビの中でも声が暗くなり
喉を締めそうになる箇所は残っていました。
それは本人も「要練習」というように
一か所が直れば全部自動的に直るわけではない
地道な練習が必要なことが分かっています。
つまり今回確認できた変化は、
「高音が完全に安定した」ではありません。
必要以上に力まずに
高音へつなげられる場面が出てきて
どういう声を目指せばよいのかが
具体的になった
という段階です。

「高音が出た」以上に大切だったこと
今回のレッスンで私が重要だと感じたのは
新しい高音を獲得したわけではないことです。
もともと高音は出ていました。
地声と裏声もミックスできるようになっていた。
それでも曲になると、
高音だから頑張る
→ ボリュームを足す
→ 息で押す
→ 声が細くなったり、張り上げたりする
という癖が出ていました。
発声では力まずにつなげられるのに
実際の曲になると必要以上の力が入る。
この違いを本人自身も体感できたことが
今回の大きなポイントだと思います。
だから発声練習と曲の歌唱練習は
紐づいていないといけない。
発声練習で高音が出るように
なったあとに必要なのは必ずしも
「もっと強い声」
「もっと高い声」
ではありません。
今回のように、
「すでに持っている声を
どうすれば歌の中でも使えるのか」
を練習する段階へ進むこともあります。
同じ「高音が安定しない」でも原因は人によって違う
今回の生徒さんの場合は
高音そのものは出ている
↓
地声と裏声はミックスできている
↓
しかし高音になると声が細くなりやすい
↓
曲になるとボリュームを足そうとして力む
↓
息で押したり、特定の強い音色へ寄ったりする
という流れが確認できました。
だから今回のレッスンは
「もっと高音を出す」よりも
声の芯を残すこと
必要以上に息で押さないこと
明るい音色を保ちながら実際の歌へ戻すこと
を扱いました。
ただし同じ「高音が安定しない」
という悩みでも
全員が今回と同じ状態とは限りません。
私はレッスンで、
実際の声を確認する
→ どこで崩れているのかを見る
→ 必要な発声練習を試す
→ その感覚を曲へ戻す
→ 本人が再現できる方法を探す
という流れを大切にしています。
高音が出ないのか。
高音は出るけれど細くなるのか。
発声ではできるけれど歌になると力むのか。
ここが違えば
必要な練習も変わってくるからです。

高音が苦しい
高音が出る日と出ない日がある
地声と裏声がうまくミックスできない
あるいは発声練習ではできるのに
曲になるとうまくいかない。
そんなときはただ高音の練習を
繰り返すのではなく
今の声で何が起きているのかを
一度整理すると
練習するポイントが見つかることがあります。
レッスンでは実際の声や歌を確認しながら
その方の状態に合わせて
必要な練習を組み立てています。
「練習しているけれど
自分の場合は何を直せばいいのか分からない」
という方にもご自身の声を知るきっかけとして
ご利用いただければと思います。

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