張り上げずに力強く歌う|地声・インテンシティ・ラウドネスの本質

歌や音楽

みなさん、こんにちは。
ボイストレーナー・話し方講師の
新田知代です。


「地声で高音を出したい」
「もっと力強く歌いたい」と
思ったことはありますか?



私はあります。
特に声楽出身だったので
ミュージカル出身歌手のような
力強い歌声には
とても強い憧れがありました。

そして私のように声楽出身でなくても
ボイトレをある程度続けてきた人ほど、
この壁にぶつかりやすい、
限界突破したいという相談も
レッスンでたくさん伺います。

声区(地声・裏声)のコントロールは
歌の表現力を決定的に左右します。

そしてそのコントロールの根本には
「地声の正体を理解しているかどうか」が
関わっています。


今回は、解剖学的な視点も交えながら
地声の正体力強く歌うための実践的なコツ
解説します。

ボイトレ中級者以上に向けた内容なので
少し踏み込んだ話もしますが、
ここを理解できると歌の可能性が
ぐんと広がるので最後までお付き合いくださいね。


ちなみにこのテーマは、
音声でもお話ししています。
文章より“声”で聞いた方がイメージしやすい方は
こちらからどうぞ。

▶︎ 音声で聞くPodcast(リンクはのちほど)

まず知っておきたい「声が出る仕組み」

声の話をするときに避けて通れないのが、
声帯の構造です。
難しく考える必要はなく、
シンプルにお伝えするとこんな仕組みです。

  1. 喉仏に格納されている
    声帯(2枚のヒダ)が閉じる(内転する)
  2. 閉じた声帯に肺から送られてきた息が当たる
  3. 声帯が振動して音が出る

ざっくりお伝えするとこれだけです。



解剖学的に言うと、
声帯は甲状軟骨(いわゆる喉仏)の内側に位置し
粘膜のヒダで「声帯筋」や「声帯靭帯」などの
複合構造で成り立っています。

この声帯を動かしているのが
内喉頭筋群と呼ばれる筋肉たちで、
声帯を閉じたり開いたり、
引き伸ばしたり厚くしたりする
精緻なコントロールを担っています。

「歌は体が楽器」とよく言われますが、
その楽器の中心は間違いなくこの声帯です。

地声の正体——「あっ!」を伸ばした声

「地声」と聞いて、何を思い浮かべますか?

・普段しゃべっている声
・太くて力強い声

そういうイメージを持っている方が多い
と思います。



でも、これだと少し抽象的なので
ここではしっかり定義付けたいと思います。

地声の本質は「息漏れをしていない、
声帯がしっかり閉じた状態で出る声」です。



息漏れ、声帯を閉じる(声帯閉鎖)、
よく聞く単語ですが
イマイチ掴めない方もいらっしゃいますよね。

これを体感する一番手っ取り早い方法は

驚いた時に出る「あっ!」という声を、
そのまま「あーーー」と伸ばす

ことです。


ポイントは、
息をのんで出す「あっ…」ではなく、
子供のように無防備に驚いて
思わず出てしまう「あっ!」 の感覚です。

声帯破裂音というプツっとした
アタックの音が入っていたらOK。

この声を伸ばしたものが、
地声の基本形になります。

なぜこれが地声なのか。

それは驚いた瞬間、
声帯は反射的に素早く閉じ(内転し)、
息が一気に当たることで音が出ます。

この状態こそが
声帯同士が厚くくっついた、地声の発声状態
なのです。

ボイトレで言う「厚い声帯閉鎖」ですね。

声帯の厚さと声区の関係

ここが今日のキモの話です。

声帯の状態聴こえ方音域
声帯が厚く振動する私たちが「地声」と感じる声低音が出やすい
声帯が薄く引き伸ばされて振動する私たちが「裏声」と感じる合唱風の声高音が出やすい

解剖学的に言うと、地声に相当する
モーダルレジスター(チェストボイス)では、
声帯は厚み全体で振動しています。
裏声に相当するファルセットレジスター
では、
声帯靭帯と粘膜の端だけが振動し、
声帯筋はほぼ働いていません。


大事なのはここからです。

実は、声はこの2つの状態の
グラデーションで成り立っています。



「地声」と「裏声」の間には
無数の中間状態があり、
それをコントロールできるようになると
伸びやかな声が出せるようになります。

話し声で地声と裏声が自然に行き来しするように
歌声でも意図的にそれができるようになるんです。

声区のコントロールができてくると、
「地声と裏声の境目(換声点)」が
なくなってきます。
ブレイクやフリップ(ひっくり返り)に
悩んでいる方は、
このグラデーションのコントロールが
課題になっていることが多いです。

地声を使って曲を力強く歌うコツ

仕組みを理解したうえで、
実践に落とし込んでいきましょう。

ですがその前に。
ここで一つ、大切な整理をしておきます。

「力強い声」には、
実は2種類の力強さがあります。

それは
インテンシティ
ラウドネス
です。


どちらも音量に関するワードですが
この2つを混同しているせいで、
間違った練習をしてしまっている方が
とても多いです。

インテンシティ(intensity)——声の”芯”の強さ

インテンシティとは、
声そのものの密度・強度のことです。

ボイストレーニングでよく言われる
「声帯閉鎖」の部分がここ。
音量とは関係なく、
「声帯がどれだけしっかり鳴っているか」
その質の話です。


声帯の閉鎖がしっかりしていて、
息漏れなく振動している状態の声
は、
小さな音量でも芯があって遠くまで届きます。
これがインテンシティの高い声です。


反対に、声帯の閉鎖が緩くて息が漏れている声は、
どんなに大きく出そうとしても
薄くてぼやけた印象になります。

「声量はあるのに、なんか弱く聴こえる」
という方は、
ラウドネス(音量)は出ているのに
インテンシティが足りていないケースが
ほとんどです。


インテンシティを上げるために必要なのが、
声帯の閉鎖(内転)をしっかり保つことです。


よくある失敗は、
高音域に近づくにつれて
声帯の閉鎖が緩んでしまうことです。

ここで重要になってくるのが息の量です。

声帯の閉鎖をしっかり保てているなら、
むしろ息の量は最小限で大丈夫です。
ただ、喉周りの筋力が足りずに
息でプッシュする癖を持っている方も多いので
その場合は声門下圧の
エクササイズも有効的ですね。



息の量が多すぎると声帯の閉鎖が
「吹き飛んで」しまい、
インテンシティが下がる傾向があります。

「声帯をしっかり閉じて、息は最小限で鳴らす」
これがインテンシティを高める基本原則です。

要は息漏れしないで歌いましょう~
ということです。

ラウドネス(loudness)——聴こえ方としての”音量感”

ラウドネスとは、
聴いている人が感じる音の大きさのことです。

実際の音量が数値的に大きいよりも
音が響いて大きく知覚する大きさ
と言ってもいいかも知れません。


これは物理的な音圧だけでなく、
声に含まれる倍音の豊かさによっても変わる
いわば「体感的な音量」です。



ここで登場するのが、
シンガーズフォルマントという概念です。

声には基音(一番低い成分の音)の上に、
倍音と呼ばれる複数の音の成分が重なっています。


このうち、
2000〜4000Hzあたりの倍音帯域が強調されると、

・声が抜けてくる
・遠くまで届く声
・艶がある声

という印象になります。
これがシンガーズフォルマントです。
(帯域については研究や文献によって幅があります)

いわゆる「よく響いている声」ですね。

オーケストラの演奏の上からでも
オペラ歌手の声が聴こえてくるのは、
まさにこの帯域の倍音が豊かだからです。


では、この倍音帯域は
どうすれば強調できるのか。



その鍵を握るのが
披裂喉頭蓋筋(ひれつこうとうがいきん)
という筋肉です。

声帯のすぐ上、
喉の入口あたりにある筋肉で、
ここが適度に収縮すると
喉の上部空間(喉頭前庭)が狭まります。

この「狭まり」が音響的な共鳴腔として機能し、
2500〜3200Hz帯域の倍音を
効率よく増幅してくれます。



つまり、
喉の奥を適度に締めた状態(狭窄)で
声を鳴らすと、
声の音量を上げなくても
聴き手への届き方がぐっと増すのです。

ただし、仮声帯の圧迫を引き起こす
場合もあるので練習の際は注意が必要です。

感覚的には
「喉の奥に小さな空間を作るようなイメージ」
と表現されることが多いです。

仮声帯をリラックスさせる
あくびしかけの喉が横にふわっと広がる感覚から
少し締めた位置が、
披裂喉頭蓋筋が働きやすいポジションです。


そしてこれを安定させるためにも、
体の重心を下げることが重要です。

高音を出そうとして体が浮き、
肩や顎が上がってしまうと、
喉全体に余計な緊張が入って
披裂喉頭蓋筋のコントロールが難しくなります。

重心を下げて体の軸を安定させることで、
喉まわりの余分な力が抜け、
この筋肉が自然に働きやすい環境が整います。

練習におすすめの曲・アーティスト5選

ここまで話してきた
インテンシティとラウドネス、
それぞれの観点から
「耳で覚える」ために最適な曲を紹介します。

まず聴き込んで、
その声の質感を体に染み込ませてから
自分で歌ってみましょう。

① Superfly「愛をこめて花束を」(2008年)

【インテンシティ+ラウドネス両方の教科書】

声帯閉鎖の強さと倍音の豊かさが
高いレベルで両立している、
まさに理想形の一曲です。

どの音域でも声に芯があり、
かつ音が「前に飛んでくる」
ラウドネスの感覚を耳でしっかり体感できます。


インテンシティとラウドネスの違いを感じ取る
「基準の声」として、
まず繰り返し聴いてほしい曲です。

② back number「水平線」(2020年)

【インテンシティの練習に】

Aメロからサビにかけて、
地声の閉鎖を保ったまま
音域を段階的に上げていく構造が非常に明快です。

張り上げずに芯を保ち続ける
インテンシティのコントロールを、
曲の流れの中で自然に練習できます。

「力まずに芯がある声」の感覚をつかむ
入門曲として最適です。

③ Aimer「残響散歌」(2022年)

【インテンシティの手本として】

声帯閉鎖の強さと息の密度が際立っており、
どの音域でもぶれない芯の太さが学べます。

特にサビの高音域でも閉鎖を緩めずに
鳴らし続ける発声は、
インテンシティを高める練習の教材として
非常に優秀です。

自分で歌う際は、
音量を抑えながらも芯を保つことを
意識してみましょう。

④ YOASOBI「アイドル」(2023年)

【地声と裏声のグラデーション練習に】

換声点付近の音域を多用する構造になっており、
地声と裏声の境目をなくす
グラデーションのコントロールを
実践的に鍛えられます。

テンポが速く音域の跳躍も多いので、
まずはゆっくりテンポで
音域の切り替えに慣れてから
原曲テンポに挑戦するのがおすすめです。

⑤ MISIA「Everything」(2000年)

【ラウドネスの理想形を耳で覚える】

シンガーズフォルマントの豊かさという点で、
日本のポップスの中でも
群を抜いているアーティストです。

マイクを通しても「声が前に出てくる」感覚、
これがラウドネスの高い声の正体です。

耳に刷り込む教材として、
繰り返し聴き込んでみてください。

まとめ

今回のポイントを整理すると

・地声の正体
 「声帯がしっかり閉じた
 (厚く振動している)状態の声」

「あっ!」を伸ばす感覚
 地声の状態を体感できる

・地声と裏声はグラデーションであり、
 その境目をなくすことが歌の自由度を高める

・力強い声は
 インテンシティ(声の芯)と
 ラウドネス(体の響き)の2つで作らる

・インテンシティは声帯の閉鎖+最小限の息

・ラウドネスは披裂喉頭蓋筋による
 倍音(シンガーズフォルマント)の
 強調+体の重心の安定で高まる

・練習曲はまず聴き込んで耳を育てる
 

声の仕組みを頭で理解するだけでなく、
体でその感覚をつかんでいくことが大切です。
何度も試して、自分の歌を録音して聴き返して、
少しずつ自分の声と耳を育てていきましょう。

本気で歌と向き合いたいと思っているあなたを、
応援しています!



「声帯をしっかり閉じているつもりなのに、
 なんか薄い」
「力強く歌おうとすると、
 どうしても張り上げになってしまう」
「結局張り上げてしまってと喉が締まる」

そんな壁にぶつかっている方、多いと思います。

でもその壁には必ず原因があります。


この記事でお伝えしたように、
インテンシティとラウドネスは
別々の仕組みで成り立っています。

つまり「どちらが欠けているのか」を
正確に見極めれば、
アプローチの方法は変わってきます。



ただ、自分一人で原因を特定して、
有効なアプローチをするのは
なかなか難しいのも事実です。

プロのトレーナーは、
その原因特定と修正指導がとにかく早い。

声帯の閉鎖の問題なのか、
披裂喉頭蓋筋の使い方の問題なのか、
それとも別の問題なのか。
そのジャッジメントが正確で早いです。


何ヶ月も「なんでだろう」と悩んでいたことが、
レッスン一回で腑に落ちるというのは、
全然珍しくない話です。

NEWNESS MUSICでは、
クラシックとポップス双方の発声理論をベースに、
解剖学・科学的視点から
あなたの声の現在地を正直にお伝えします。

現役VTuberや音楽事務所所属タレント、
プロの声のメンテナンスも
担当している私と一緒に、
その天井、破りにいきましょう。

▶︎ 体験レッスンの詳細・お申し込みはこちら

NEWNESS MUSIC - 仙台市名取市のボイストレーニング教室
仙台市と名取市のNEWNESS MUSICは、あなたの夢や目標を全力でサポートするボイトレ教室です。 当ミュージックスクールでは、ボイストレーニングやボーカルテクニックから声楽、ソルフェージュ、音楽理論に至るまで、多岐にわたるレッスンを提供...

タイトルとURLをコピーしました