こんにちは。
ボイストレーナー・話し方講師の
新田知代です。
今日は、少し印象に残った出来事から
「通る声」と「ただ大きい声」の違いについて
書いてみようと思います。
ちなみにこのテーマは、音声でもお話ししています。
文章より“声”で聞いた方がイメージしやすい方は、こちらからどうぞ。
▶︎ 音声で聞くPodcast
▶︎ 音声で聞くstand.FM

先日、あるイベントに参加した時のこと。
特に司会として入っていたわけではありませんが
人の誘導や集合写真の声かけなどで
「通る声でアナウンスしてほしい」と
主催者から頼まれる場面があり
その日も自然な流れで声を出していました。
すると不思議なことに
私の声に追随するように
大きな声でアナウンスを入れる方が
何人か出てきたんです。
正直なところ・・・
少しやりづらさはありました。
なぜなら人の注意を引きたい時は
1人の声で行うのが基本的に良くて
複数人で同じ内容をアナウンスするのは
人の耳には「その他大勢」の音に変わるので
アナウンスの意味がなくなる
んですよね。
(人の声を伝播するのが癖になっている方
ご注意くださいね笑
手助けのつもりが逆になっていることがあります)
ただ、そこは私も何度もされたことが
ある現象だったのでしっかり対応し
事なきを得ました。
久しぶりに多重アナウンスになったな、
と思っていたんですが
その場ではっきり分かったことがあったんです。
はっきり分かった2つの声の違い
それは何かというと声の違いです。
・喧騒の中でも、何を言っているか分かる声
→通る声
・声量は大きいのに、内容が全く伝わらない声
→ただ音量が大きいだけの声
この2つは、まったく別物だということ。
これ、意識したことありますか?
もしかすると耳にしたことはあるかもしれませんが
具体的に何が違うのか
自分の声の場合どう違うのか
この違いが分かっていないと
アナウンスしている人の声の
お邪魔虫をしてしまうですよね。
先に伝えたように
同じ内容を伝える声が複数人になると
注意を引くのではなく
ただ大きな会話に人は捉えてしまうので
要注意事項なのです。
イメージしやすいのは
大きな声で誰かが何かを言っている
のは分かる。
でも周囲のガヤガヤに溶け込んでしまい
情報伝達としてはほとんど機能していない。
そんな声が入ると
「誰かが大声で笑っていて
自分の声がかき消されてしまうから
もっと大きな声で話そう」となり
全体の音量だけがUPしてしまうんですよね。
大きい声の特徴
では大きな声の特徴とはなんでしょうか?
そしてなぜ大きい声と通る声は
混同されてしまうのでしょうか?
その理由はシンプルです。
大きい声=通る声ではない
ただし
「大きな声=通る声」と誤認識していて
声量任せにしている事が多いから。
音量が大きい声は
確かにエネルギーはあります。
でも言葉としての輪郭が曖昧なことが多い。
「(しゅ)ううううううう(ご)おおおおお」
(集合)
のように母音だけを長く伸ばしている
特徴があります。
ここはアナウンス技術の部分ですが
情報伝達をする際に
母音を長く伸ばすのは
子音が聞こえなくなってしまうので悪手
情報伝達としての発音は
子音の明瞭さも肝になってくるので
絶対にやりません。
なぜなら「言葉」として
認識されなくなるから。
もしやりがちな方がいらっしゃったら
お気を付けくださいね。
通る声が持っている特徴
さぁ、ボリュームが大きい声について
特徴をお伝えしてきましたが
一方で、通る声はどうなのか。
声の特徴としてただ音量が大きいだけでなく
倍音が多く含まれ
人の耳に入りやすい声質になっています。
もう一つの特徴として
発声が整っているので
母音の響き方がある程度揃っていて
滑舌よく話せる声なのも特徴。
声質の部分で言うと
人の耳が拾いやすいとされる
2〜4kHz帯の倍音が含まれている声は
喧騒の中でも埋もれにくく
その音が含まれていることが多いですし
私も意識して倍音を入れています。
だから同じ音量でも
通る声の方が「大きく聞こえる」。
声量ではなく、声質。
ここがとても重要なポイントになります。
「ただ大きい声」が抱えやすいリスク
もう一つ
「ただ大きい声」について
知っておいた方がいいことがあります。
それは、
声が枯れやすくなる可能性が高い
ということ。
たとえば
応援団などで声を張り上げ続けた結果
声が枯れてしまって
大人になっても戻らないケースがあります。
これは全員がそうなるわけではなく
戻る人もいるのでご安心ください。
その出し方を学んだ(教わった)時に
喉を傷めずに出せるようになった人と
喉を傷めながら出していた人の違いです。
傷めながら出していた場合、
その出し方が癖になってしまうと
日常的に声が枯れやすくなります。
大人になってから歌がうまくなりたい、と
後からボイストレーニングに来られる方も
いらっしゃいます。
安心して欲しいのは
枯れやすくなっている状態ですが
声や歌声はボイストレーニングを行う事で
かれにくく、歌声を伸ばすことは可能です。
症状によっては一旦
お医者様をご案内することもありますが
声の健康は体の健康と同意なので
不具合を感じるようであれば
遠慮なく相談いただきたいのです。
良い経験でも注意は必要
さて、そんな応援団の話や
野球部などの部活で大きな声を出した
経験のお話をうかがうと
「いい思い出だし、いい経験だった」
とおっしゃる方がほとんどです。
キラキラした懐かしそうな目で
語られる雰囲気がとても素敵で
想い出をたくさん聞いてしまいます。
そして同時に
「まさか今になって
歌や声に影響が出るとは思っていなかった」
という言葉もよく聞きます。
大人になって大きな声は出るけど
滑舌が良くない原因が
当時の大きな声を出す(張り上げ)が
癖になっていること、と言われたら
どう対処したら良いか
分からなくなりますよね。
これは
その風習が良い・悪いという話ではありません。
癖があるなら癖を取って
通る声を出しやすい喉の筋力を鍛えて
正しいフォームにしてあげればいいだけ。
ただ気を付けていただきたいのは
日常的に“通る声”ではなく
“大きい声”だけで話す癖がある場合は、
少し注意した方がいい
というだけの話です。
声は「届くまで」に時間がかかる
そして冒頭の話に戻ります。
あの時
声のお手伝いをしてくれた方たちは
自分の声がどう届いているかを
どれだけ意識していたのでしょう?
実は雑音の多い場所で
人が「これは声だ」と認識するまでには
タイムラグがあることをご存知ですか?
実は私たちアナウンサーや司会をする人間は
自分の声が相手の耳にどう届いているのか
何秒後に届くのか
そこまで計算して発言しています。
喧噪の中で
人が「これは声だ」と
認識するまでかかる時間は
最大で、約5秒。
(新田の個人的な肌感覚です)
最初の3秒、最初のアナウンスで
「もしかして、聞こえていないかも?」
と感じたとしても
通る声で同じ内容を2回繰り返す。
そうすると1回目で
「何か言ってるな」と気が付いて
2回目で聞き耳を立てるようになる。
大型スーパーなどで同じ内容を
2回繰り返すのはこういう意図があるのです。
補足:雑音の中で「声が届く」までの時間について
少し補足として書いておきます。
雑音の多い場所で
人が「これは声だ」と認識し
その内容に注意を向けるまでには
先にお伝えした通り
わずかなタイムラグがあります。
音として耳に入るのは一瞬ですが
それが
・声なのか
・自分に向けられたものなのか
・聞く必要がある情報なのか
を脳が判断するまでには、
環境によって数秒かかることがあります。
特に
・周囲がざわついている
・複数の音が同時に鳴っている
・聞き手の注意が別のことに向いている
こうした条件が重なると
声が「情報」として認識されるまでに
時間がかかりやすくなる。
現場での体感としては
最初の数秒は
「音としては聞こえているけれど、
まだ意味として処理されていない」状態。
そこから徐々に
「声かもしれない」
「呼ばれているかもしれない」
と注意が向いていく。
司会や誘導、アナウンスの場面では
この注意が切り替わるまでの時間を見越して
焦らず、一定の質を保った声で
声を届け続けることが大切になります。
声量を上げて一気に注意を引こうとするよりも、
言葉として聞き取りやすい声質で
根気よく届ける方が
結果的に「通る声」になることが多いのです。
声は「出すもの」ではなく「届くもの」
さて、大きな声と通る声の違いについて
お伝えしてきました。
一番分かりやすい違いは
大きな声で情報伝達をした時に
周りの人がきちんと言葉の内容を
理解した動きをしているかどうか。
もし反応がなかった場合は
声量の問題ではなく
言葉としての音が
相手に届いていない可能性を
疑うことがおすすめです。
「滑舌よく情報」を届けているのか
「大きい声で注意を引こうとしている」のか
注意してみてくださいね。
改めて考えることは
声を出すこと自体は簡単でも
「どう届いているか」を考えて話すことは
意外と意識しないものです。
私も当たり前に
この場面ではこの声、という意識の
切り替えをしながら話していますが
必要とされている場面で
必要な声を使って行こう
今回の出来事は、
改めてその大切さを考えさせられる
出来事でした。
ここまで読んでくださった方の中には
「自分の声は、どう届いているんだろう」
と感じた方もいるかもしれません。
声は自分では一番気づきにくい部分です。
レッスンでは声量や気合いではなく
声質・発音・届き方を軸に
今の状態を整理するところから行っています。
必要な方に
必要なタイミングで届けば嬉しいです。
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